ライチョウのこと – ニホンライチョウとは –
ライチョウは、国の特別天然記念物に指定されており、現在は絶滅危惧種です。
本州中部の北アルプス、中央アルプス、南アルプスなどの高山帯に生息しています。
ライチョウを見るために山に登る人もいるほどです。
地球の北半球北部に生息しているライチョウのうち、日本に生息している亜種のことをニホンライチョウ(学名:Lagopus muta japonica )といいます。
-> 生態について
-> ライチョウの数の減少について
世界的に寒冷で、氷河が広く発達した時期(いわゆる氷河時代)にライチョウの生息地も広がったのではないかといわれており、氷河期が終わりを迎えるころ、大半のライチョウは北半球北部へ戻ったものの、日本に留まった一部のライチョウが、高山で生きることになったと考えられています。
<分類>
キジ目ライチョウ科ライチョウ属
学名:Lagopus muta japonica
Lagopus =うさぎの足
muta/mutus = しずかな 無声の(変わるという意味もあるらしい)
大町山岳博物館の紹介は「うさぎの足を持った静かなだんまりやさん」
英名では Ptarmigan
ニホンライチョウの学名については、下記ページに詳しく掲載されています。
「ライチョウLagopus muta japonica の四季」(森林総合研究所)
広告
生態について
大きさ
大きさは、ハトより少し大きめの全長約37cm程度
スズメは約14cm、ハトは約30cm。
スバールバルライチョウはニホンライチョウよりさらに一回り大きい。
ここで唐突に「スバールバルライチョウ」が出てきますが、このスバールバルライチョウの故郷は北欧です。「ニホンライチョウ」の飼育に役立てようと、日本に連れてこられました。
一部の動物園などで見ることができます。ニホンライチョウと似て、こちらも愛らしい鳥です。
換羽
1年に3回 羽が生え変わります。
繁殖期には、オスは黒っぽい色に、メスは黄茶褐色に変化します。
秋になると、オス、メスともにくすんだ黒褐色へ、
冬、高山が白い雪で覆われる頃、オス、メスともにほぼ全身白となります。
周りの環境が変わっていく時期に合わせて換羽することで外敵から身を守っていると考えられています。
換羽の時期は、オスとメスで違いが見られます。また、1回しか換羽しない部分もあります。
詳細は
「二万年の奇跡を生きた鳥 ライチョウ」 2013年 農山漁村文化協会 中村浩志(著) 第五章
に詳しいため興味のある方はぜひこちらの閲覧を。
なお、スバールバルライチョウの換羽は年2回と言われています。
主な食物
ハイマツ、ダケカンバの冬芽や大シラビソの葉、クロマメノキ、チングルマ、コケモモ、ガンコウランなど高山植物の芽、葉、花、実です。春から夏にかけては、昆虫類なども食べています。
一年中葉が緑のハイマツはライチョウの営巣場所や隠れ場所として重要な役割をはたしているそうです。
繁殖
メスは6月ごろ、ハイマツなどの根元に巣をつくりおおよそ6個の卵を産みます。
抱卵をはじめるのは、6月下旬の夏至あたりから。
環境の変化等により、より多くの卵を産むことがあります。
動物園で多くの数の産卵が見られるのは、ストレスなのかもしれないと飼育に携わる方から伺いました。
卵を抱卵するのは、6/20あたり(夏至)から。
産卵や抱卵の時期には、日照時間が関係していると言われています。
ヒナの特徴
卵からヒナが孵化するのは、おおよそ23日目。
ヒナは天敵に襲われた際に逃げることができるよう、生まれてすぐに動き回ることができます(早成性といいます)。
ただし、ヒナは体温をうまく保つことができないため、雨や風、寒さにさらされるとすぐに死んでしまいます。
このため、定期的に母鳥のお腹の下に入り、温めてもらい命をつないでいます。
ヒナのうちから足が太く、足場が悪い場所やかなり急なところでも平気でのぼれます。
広告
ニホンライチョウがいなくなる?
現在ニホンライチョウがいると思われる生息地
ニホンライチョウは、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南アルプスなど本州中部の標高2,200~2,400m以上の高山帯(ハイマツ林帯や岩石帯)に生息しています。冬期には少し降った亜高山帯で過ごしているようです。
白山、八ヶ岳及び蓼科山にも生息していたという記録がありますが現在は絶滅しています。
1980年代に調査された際には生息数約3,000羽と推定されていましたが、2000年代初めの調査では約1,700羽に減少したと推定されました。
2012年(平成24年)には、近い将来絶滅の危険性が高い「絶滅危惧種l類(IB類)」に指定されています。
ライチョウの個体減少に関わっていると思われるいくつかの要因
- 温暖化やニホンジカ等の植生の破壊によって主な食物である高山植物が減少している
- 観光開発による環境の変化、登山客の増加ごみやし尿の不適切な処理等による細菌・ウイルス等の感染
- ハヤブサ、イヌワシなどの猛禽類、チョウゲンボウ、オコジョなど本来の天敵に加え、人が残してしまったごみの放置等によってキツネ、ニホンザル、カラス等の生息域の拡大し、捕食されるリスクが高まっている
これらの要因については、ライチョウに関する書籍 にあげた本に詳しく載っています。
ニホンライチョウを保護する動き
このままだと近い将来ニホンライチョウがいなくなると考えられ、環境省による保護事業が行われています。
南アルプスの北岳周辺では、人の手によって保護されたことから個体数の増加が見られました。2023年度には、人の手によるケージ保護は行われないそうです。
絶滅したと思われていた中央アルプス山域においても、北アルプスからの移送や人の手による保護、動物園で生まれたニホンライチョウを生息地へ戻す野生復帰の取り組みなどが行われ、2022年末現在、100羽を超える生息が推定されています。
保護事業については ニホンライチョウの保護事業 に掲載しています。
ライチョウに興味を持たれた方は 保護事業 についてもご覧ください。